カリフォルニア国際マラソン(CIM)

12月2日にカリフォルニア州の首都サクラメントで開催された、第30回カリフォルニア国際マラソン(California International Marathon)に参加してきた。名前が長過ぎるので、ランナー達にはCIM, シムと呼ばれている。
正確にはサクラメントからバスでFolsomと言う場所まで連れて行かれ、そこからスタート。多少のアップダウンはあるものの、ネット下り坂、特に最後の方は走りやすい1%前後の緩やかな下り坂が続く高速コース。自己新記録を狙うランナーや初フルマラソンに挑戦するランナーなど、ナパバレーマラソンと共にこのあたりでは人気の高いレース。
自宅から2時間ほどかかるのと、バスが出るのが午前5時と早いので(レース開始は7時)、サクラメント市内に前泊。土曜日にレースパッケージを受け取りに行った。最大8千人の参加者らしいが、こじんまりした感じのエキスポだった。華やかだったNYCマラソンとはまた違った手作り感が逆に良かった。

  
カリフォルニアの冬は雨が(割と)多い。12月第1周のCIMと3月第1周のナパは天気が良いとは限らない。実際2009年にナパを走ったが、かなりの雨が降っていた。今年のレース日のサクラメントの天気は。。。予報通りの大雨、強風。特にスタートの午前7時ごろが雨、風ともピーク。ううう。(涙)

気温は暖かめに出ていたので、ポンチョの下はシングレットとアームウォーマーだけにした。(後で後悔したがw)

  
スタート地点に到着したが、あまりの風雨に他のランナーと顔を見合わせて笑うしか無い状態。スタートの30分前までバスで待機。大勢のランナー達が、ガソリンスタンドの屋根の下で何とか濡れない様に待っていたが、横殴りの雨にはあまり効果が無かったのでは?

  
スタートラインで待っている間、震えが止まらなかった。まるで台風のような風雨。待っている間にシューズもずぶ濡れ。
あまりネガティブなことばかり考えてもしょうがないので、目標タイムである4時間10分のペースグループを探して、音楽に合わせながら踊るようにウォームアップ。そして午前7時ちょうどにスタート! ゲートを通過するのに4分くらいかかった。
本当は4時間(サブ4)のグループについて行こうかとも思ったが、前日から風邪気味だったので4:10グループにした。

(写真はSacramento Beeから拝借)
  
前日に地図を見ていたら、最初の5マイルまっすぐ、左折してまた5マイルほどまっすぐ!のコースだったので少し心配していた。まっすぐな道路が果てしなく続いているのが見えると心が折れる可能性があるから。
走り出してみたらそれは取り越し苦労だった。平坦ではなく延々とローラーが続き、しかも顔にバチバチと叩き付ける雨で先の心配する余裕は全くなし(笑)。しかも持参したスポーツドリンクを飲むたびに吐き気を感じる。のどが腫れて圧迫されているのだろうか? 悪天候と悪体調のダブルパンチに左右されないように、とにかく気道を開けてきれいなポーズで走る事だけに集中する。
  
10マイルあたりだったと思うが、道路に大きな水たまりやあふれた水が流れ込んでいた。最初はシューズが濡れないように気にしていたが、この時点では逆に楽しんでバチャバチャと水の中を走ってやった。こんな大雨の早朝に応援に来てくれた地元住民には本当に感謝したい。CIMの観客は、何と言うか熱がこもっていた。心の底から応援してくれている感じがしたし、実際に朝っぱらから声をからして応援してくれる人達が切れ目無しに続いていた。
全員に反応していると疲労してしまうので出来なかったが、なるべくお礼を言いながら走った。これはボランティアの方々も同じ。なるべく多くの人に感謝の言葉を伝えたかった。
  
20kmスプリットは2時間3分くらい。数字的には予定通りに見えるが、実際はペースグループについて行くのがやっとの感じだった。全く余裕がなく、とてもこのペースを持続出来るとは思えなかった。栄養補給でジェルを2回食べたがまた吐き気が。。。この時点では不安がいっぱいだった。
  
しかし応援の人が増えるとともに、なぜかマイルマーカーの感覚が短く感じ始めた。すでに頭が朦朧としていたせいもあるのだろうが、15マイルの次のマーカーを探して走っていたら、何とすでに17マイルのマーカー! これは嬉しい誤算。ランナーズハイなのか、セカンドウィンドなのか。ペースグループにぴたりとついて走り始めた。そしてマイル20地点にあった"The Wall" (壁!)を笑い飛ばしながら通過する余裕。(自分はこの写真に手だけ写っているw)

  
その後ペースグループのスピードがじれったく感じ始め、21マイル地点で我慢出来ずペーサーを抜き去る。体は疲れているが足もあがっている。気分は最高だった!この時点でこれだけ余裕がある事実に驚きながらも、これまでのトレーニングの成果かと思うとちょっと走りながら涙ぐんでしまった。こんなの初めて。見渡すかぎりの下り坂でペースを保持する。ただ、同じレースを走った二人の同僚に聞くと「目に見える様な下り坂はなかったし、感じなかった。」と言っていた。自分が見たのはまぼろしだったのか?
いずれにしろ24マイルまでは辛いながらも、最高の気分で走れた。よく辛くなると独り言を言い始めるのだが、今回はしきりに"Feel the pain!"と言っていた。濡れたソックスのせいで、足裏の皮がむけてきていたのだが、その痛みを感じるのがちゃんと走れている喜び!みたいなぶっとんだ事を感じていたらしい。"Feel the pain! I can do it!"とぶつぶつ言いながら、必死の形相、でもヘラヘラしながら走っている姿に観客もかなりびびっていたかも。
最後の1−2マイルははペースが落ちた。でも気持ちは折れず。自分でも褒めて上げたい。ゴールのCapital Parkが見えたときは感動した。ただかなり頭が朦朧としていたので覚えていない。ゴールに飛び込んだ後も係員に支えてもらわないと歩けない状態。持てるもの全てをコースに置いてきたぞ!と言う感覚がいちばん嬉しかった。
正式記録で4時間9分11秒。7月のサンフランシスコマラソンより4分ほど早い自己新記録。この天候、体調で新記録が出た事は嬉しい。そんなものいるのかどうか知らないが、マラソンの神様に感謝したい。

  
ゴール地点でチョコレートミルクや暖かいホットケーキを堪能した後、チェックアウトを2時にしてくれたホテル(Holiday Inn Capital Plaza)に戻りゆっくりと風呂に入る。つま先の感覚がまったく無かったので、皮が完全に剥離してしまったか、と思ったがお風呂で普通に戻った。良かった。今回はToe Capsで足の爪も保護したので血豆無し! と言うか古い血豆はまだあるが、あたらしいのは出来なかった。これも嬉し。
ゴールする少し前に雨も上がり、ホテルをチェックアウトしたころにはこの青空! 朝の風雨がうそのよう。まるでマラソンランナー達が、走っている時は「もう二度とマラソンなんてやるもんか!」と思っているのに、終わったらその辛さをケロッと忘れてしまうように。短いマラソンキャリアの中で最高のレースだった。。。