Dick Collins Firetrail 50 Mile Trail Race

American River 50Mや、Way Too Cool 50Kを主催するNorCalUltrasのレース。5月に申し込んでから、今年最大の目標レースだと決めてトレイルを中心に走り込んで来た。出張などで練習不足の感はあったが、50マイル走りきれる自信はあった。実際に先週末のハーフマラソンでもいい記録が出ていたし。
ところが人生は皮肉なもので、直前になって風邪をひいてしまった。熱は無かったが喉の痛みと、何より走ったときの息苦しさ。前日、前々日と早めに寝て十分体を休めたが、レース当日も同じ様な症状。ただ気分的にはかなり良くなっていたので、悩んだ末参加する事に。目標レースを風邪くらいで棄権するのは情けないので、とりあえずスタートして走れるところまで走ってみることにした。
レースは、このトレランでよく使われるLake Chabotからスタート。East Bayの山の中のトレイルをひたすらバークレーまで走り、Tilden Parkで折り返し。マラソン距離の人達はここからスタート。
いつもは真ん中辺りでスタートするのだが、今回は一番後ろからゆっくり走り始める。無理をせず、とにかく折り返し地点まで行きたかった。ゆっくり走ったせいか、前半は風邪の影響はあまり感じなかった。雲がかかった天気で涼しく、特に激坂があるわけでもないので順調に走れた。

  
Redwood ParkはCanyon Meadowのレースでも走っているので覚えていた。柔らかなシングルトラックのトレイルは静まり返っていて少し神秘的。まるでどこかから神様が降りてきそう。

  
このレースはとにかく暑いと聞いていたが、コースのほとんどが日陰。暑かったのはBerkeleyの辺りだけだった気がする。ベイブリッジとゴールデンゲートが望める場所。しばらくボーッとしていたいくらいだった。

  
Tilden Parkの折り返しまで降りて行く辺りで、速い友人達とすれ違う。この頃はまだ元気だったので、友人達と笑顔で声を掛け合えた。しかし、この4マイルの下りは長かった。。。今回は、すぐに電池切れするGarmin 620は使わずに、iPhoneをバッテリーパックにつないで、Strava Appsでデータをとった。iPhoneバックパックのなかに入れて、だいたいの時間をPebbleで見ていた。誰かに「折り返しまであと0.5マイルだ!」と言われ信じたら、そこから1.5マイルくらいあったぞ。気軽に不正確な距離を言わないでくれよ、まったくw
  
折り返し地点に着いた時、すでにドロップする考えはすっかり消えていた。「もう半分以上走ったんだ、このレースはもらった!」と感じ始めていた。さっさと着替えて、バックパックをおき、ハンドボトルに持ち替えて走り始めた。いやぁ〜、この判断が甘かっちゃん。。。4マイルを下って来たと言う事は、それを登って行かなくてはならないと言う事。ここで初めて風邪の影響を感じた。とにかく息苦しい。まるで標高の高い場所にいるようだった。30マイルのエイドステーションに着いた頃には立っているのがやっと。しかも胃がむかむかして気持ち悪い。ここから20マイル。うーん、苦しいなと思ったが、何とかバナナやエナジージェルを口に押し込んで、氷水を入れてもらってゆっくり歩き始めた。下りになると少し楽になったが、とにかくもう胃が気になって長く走れない。こうなったら生き残り作戦だ。とにかく次のエイドステーションまで進んで行こう。制限時間に引っかからなければ良い。胃を守りながら少しずつ前進して行こうと。
  
37マイルのエイドはオクトーバーフェストがテーマ。

ここは往路で「じゃあ、37マイルでまたね!」と言われ「うーん、多分ね、ドロップするかも。」と返したら、「ダメよ〜、約束だから必ずここまで帰って来て!」と念を押された場所。何とかたどり着いたがもう胃が限界。フェンスに腰掛けて、何とか吐かないように栄養と水分補給。もうバナナのにおいだけでもオエッって感じ。
とぼとぼと歩き始めて、食べ物が消化されるのを待ったが気持ち悪さはます一方。そんな時思い出した! こんな時のために持って来た胃酸を抑える薬があるではないか! 願いを込めて薬を飲んだが、なんと逆効果だった様だ。数分のうちに激しい吐き気に襲われた。しかも甘〜いゲロ。(お食事中の方、すみません) 
  
出してしまえば少しは楽になった。少しペース上げて走れたので、「おお、これで大丈夫!」と喜んだ。のも、束の間。この後何度も吐き気が襲って来た。それでもエイドステーションに着くと、拷問のように食べて、飲んだ。ジンジャエールだったらいいんじゃないか、とか、思いっきり塩をまぶしたポテトは。。。などと考えたが、全て拒絶反応。食べては吐き、を繰り返した。でも、吐くまでの間に少しでも栄養と水分が吸収される事を願って続けた。最後のエイドでは水だけにしたが、1マイルごとくらいに吐き気。でも胃液さえも出て来ない。もう勘弁してよ〜、と体にお願いしたが聞いてくれない。
  
夜明け前の午前6時半にスタートしてすでに12時間。フィニッシュは近いが目眩と吐き気のダブルパンチでフラフラ。そんな情けないおっさんに優しく声をかけてくれる女性ランナー。意識が朦朧としていてあまり会話もしなかったが、「もう少し!」とか「ほら、下り坂!」と励ましてくれた。彼女も右足が完全にやられているようでびっこをひいていた。やはり女性は強い。彼女に遅れまいと必死に走った。ペーサーがついているランナーは力強く抜いて行く。精神的な部分が大きいんだな、ウルトラは。
  
結局ゴールしたのは陽もとっぷりくれた、12時間34分後。241人の完走者中217位。自慢にもならないタイムだが、とにかく完走! どーしても欲しかったFinisher's jacketを受け取り、カラッカラの喉を潤し、すっからかんの胃袋を満たしたかったが、ゴール後も吐き気が続きちょっとだけ水を飲むのが精一杯。そして家に帰ろうと思ったが、足が攣りまくりで、マニュアルの車を運転も出来ない。なんとか胃と痙攣が落ち着くまで車でころがって待った。
  
家に着いて、シャワーを浴び、やっと熱いお茶が飲めた。冷たい水ばかり飲んで胃が嫌がっていたのだろうな。話を聞いてあきれかえっている女房に温かいにゅう麺を作ってもらい、やっと生き返った。
  
何のためにこんな思いまでして走るのか? その答えは。。。その答えは、あれ〜、俺にも分かんないや〜www 自分のバカさ加減にもあきれる。走る事は続けるが、病気の時はあっさり棄権しよう。こんな無茶が効く歳でもないんだし。とにかく疲れた。完走出来て嬉しいが、それ以上に疲れた。いまはただ、しっかり休みたい。