2013 ニューヨークシティマラソン

世界6大マラソン(World Marathon Majors)のひとつ、ニューヨークシティマラソンを走って来た。
去年はハリケーンの被害のため、直前になっての中止発表、その後のブルーンバーグ市長や主催者の対応の悪さで腹が立ち、一時は参加を躊躇した。しかし、腐ってもNYC、6大マラソンのひとつには変わりない。ボストンを走れるかどうか分からない自分にとっては、チャンスがある時に是非走っておきたいので参加を決意。
当日は、レーススタートは午前10時なのに、起床したのは4時。ちょうど冬時間が始まった日だったので1時間余分に寝れたが、カリフォルニアとは3時間の時差もあって、なんだか体内時計が混乱。前日に買っておいたクロワッサンとコーヒーで軽く朝食。5時20分の地下鉄(#1 Line)でフェリーターミナルへと向かう。スタート地点はスタテン島。午前6時のStaten Island Ferryに乗り込む。もちろん、もう少し遅い時間のフェリーでも間に合うのだろうが、あまり遅いと混み合うと書いてあったので早めの行動。
レース後の発表では約5万人が参加したとのこと。夜明け前のフェリーも満員だった。

フェリーの中で、アメリ陸軍士官学校から参加している女性と話していた。いつも起伏が多い場所でしか走っていないので、このコースはフラットよ、と笑っていた。余裕だなあ〜。確かにサンフランシスコやモーガンヒル、ビッグサー等を走ったランナーにも、全くフラットなコースに見えるだろう。でも、5つの橋を渡るため、一応"Roller"コースとの表記。良い記録は期待しない方が良いらしい。彼女の余裕の笑顔に見とれている間に、Staten Islandに到着。間もなく夜が明けた。

前日までの天気予報では、氷点下まで冷え込むはずだった。しかし、日頃の行いが良いおかげで、この日はスタートからゴールまで、8℃から10℃の絶好のマラソン日和。それでもスタート地点で寒さに耐えながらじーっと待っていると、「俺はこんな所まで来て何をしているんだろう。。。」と自問自答し始める。この日は、レース用のショーツ、ノースリーブのシャツ、アームウォーマーの他に、ゴルフ用のウィンドブレーカー、古いトレーナー、パジャマのズボン、ヒートシート(マラソンの後にくれるアルミフォイルみたいなやつ)で完全防備。でも古い毛布や、下に敷く段ボールも持ってくれば良かった。だって、この寒い中3時間近く待つのだから。。。
午前9時頃やっとスタート地点に入る。スタートの15分くらい前に全てを脱ぎ捨てる。ウィンドブレーカーは着て走ろうと考えていたが、予想以上に気温が高かったので捨てる事に。ちなみに、捨てるとすぐにボランティアに人達が集めに来て、Goodwillに寄付するようになっているようだ。そう願いたい。レース前に脱いだ服をポーンと投げ捨てるのはマラソンで一番嫌いな光景。何とか再利用してもらいたい。

  
スタートはまず女子プロ選手から。次に川内選手も含めた男子プロ。残念ながら自分は橋の下側(Lower deck)からのスタートで、プロ選手はちらりと見えただけ。午前10時5分にWave 2のスタート。かなり混み合う中、橋を渡っているといきなりNYPDのヘリコプターに歓迎される。

スタート前に「橋の上でおしっこすると失格になります!」と繰り返しアナウンスしていた。下を走る場合はなるべく内側にいないと上から雨(のようなもの)が降って来たりするらしい。(おぇっ)
  
3マイルほど走るときれいな青空。この辺りから沿道の観客が増えてくる。

  
参加者数が世界最大なら、おそらく観客数も世界最大。そして何よりニューヨーカーの熱狂的な応援。まるで自分がケニアのエリート選手にでもなったかのような錯覚を起こすほど。ただ、注意したのは、この声援にいちいち応えようとしないこと。これがほぼ42km続くのだから、いくら体力があっても疲れてしまう。自分は道路の中心を走りながら、応援の人達を眺めたり、いろんなサインを読みながら走った。楽しく、ず〜っとニヤニヤしながら走っていた。
また、日本語を見かけると話しかけて、会話を楽しみながら走った。埼玉から来ていた、青森リンゴの方、車いすの方、大きな日本の旗をふって応援しいた方(思わずハイファイブしましたw)など。それにしても日本からの参加って大変ですよねぇ。お疲れさまでした。
  
今回のレースの目標は3つ。

  • レースを楽しむ!
  • 42kmを失速せずに走れる、自分なりのペースの感覚をつかむ
  • 最後の10kmは力強く走りきる!

  
楽しむ事に関しては十二分に楽しんだ。でも、楽しめたのは無理なペースで走らなかったから。今回はペースよりも主に心拍数を見ながら走った。ハーフムーンベイでは実力を過信してオーバーペース、心拍数がZone 4のレッドゾーンで走っていたので、そんなペースが持続出来る訳なかった。今回はなるべくZone 3におさめるよう心がけた。心拍数が上がりすぎるとペースを落とし、落ち着いて来たらちょっと上げる。そんな感じで10マイルくらい走り、足に余裕を感じたらペースを上げてみようと考えていた。しかし、緩やかなローラーがボディーブローのように効いて来たのか、疲れを感じ始めていた。「このレースはトレーニングラン。」と自分に言い聞かせ、この辺りでサブ4はあっさり諦める。とにかくイーブンペースを保つ事だけに集中。Queensboro bridgeを渡りマンハッタンが見えた時にはちょっと興奮。この登りもあまり気にはならなかった。

今回もう一つ試したのが、徹底した水分と栄養補給。給水所がほぼ1マイルごとにあるNYCマラソン。たまにスキップしたが、ほとんどでゲータレードか水を、すこしだけ歩いてしっかり補給。もちろん飲み過ぎでトイレに行きたくならないようには気をつけた。そして、GUも合計で6個食べた。心拍数をおさえて走ると良い具合に腹が減ってくるので、GUも問題無く消化出来るし、スポーツドリンクも飲める。それでいてそこそこのペースを保つ事が出来た。またSaltstickは3回服用。
20マイル地点でも心が折れていなかった。ちょっと止まってセルフィーの写真を撮る余裕さえあった。5つ目の橋を渡り、再びマンハッタンに戻って来た時、スタートでしゃべっていた女性ランナーを見かける。彼女は歩いていたので、心配になって引き返す。「足がひどく痙攣して。。。」と聞いて心が痛む。残っていたSaltstickを全て彼女に渡し、激励してゴールへ向かう。
セントラルパークの外側、ゆるい登りをだらだらと登る。この時点でほとんどのランナーはスローダウンしているか歩き始めている。自分はまるで奇跡が起きたように元気があった。大きな筋肉はかなり疲れていたが、ふくらはぎなどが痙攣する気配はない。そして一旦見失ったペーサー達に追いつく。最後は彼らに引っ張られて、大勢のランナーをどんどん抜きさって行く。いったい何人抜いたのかわからないが、自分的には5千人くらい抜いたつもりだ(笑)。あれは気持ちよかった! 「どけどけ、どいてくれ〜!」といった感じでフィニッシュしたのは初めて。引っ張ってくれたペーサーにお礼を言いに行くと、なんとイタリア人。逆に30秒ほどきつ〜くハグされてしまったw
ここまでは感動のフィニッシュだったが、大変だったのがこの後。荷物をチェックインしなかったので、預けた人達より早く公園から出られる。それでもマラソン後の足には辛い。歩けど歩けど出口が近づかない。やっと出たかと思ったら、オレンジの特性ポンチョをもらうまでさらに歩く。。。そして、ニューヨークはオレンジ一色となって、更にとぼとぼ歩く。まるで何かの新興宗教みたいな風景だった。

  
結果は4:03:36、去年のCIMの記録を5分以上更新。しかも驚くほどのイーブンペース。サブ4はならなかったが、結果には非常に満足。何よりレースを楽しめた事、レース後のダメージも軽めだったことで今後の自信につながる。これまでサブ4は夢だったが、これではっきりとした『目標』に変わった気がする。
  
Split (5km)
5K 0:29:22
10K 0:28:13
15K 0:28:25
20K 0:28:54
25K 0:29:45
30K 0:28:33
35K 0:29:35
40K 0:28:13