American River 50 Endurance Race

通称AR50と呼ばれるこの50マイル(80km)トレランレース。1000名近くの参加者は、北カリフォルニアだけではなく、他の州から飛行機で乗り込んでくるほどの有名で人気のあるレース。去年まではSacramentoからスタートし、Auburnでフィニッシュだったが、今年からコース変更になり、Folsom LakeのBrowne Ravine's Marinaからスタートになり、前半が大幅変更、後半も距離調整のためか、ループ部分を設けたりした様だ。

自分にとっては初めての50マイルレース。正直かなりナーバスになっていたが、レース前日に日本人ランナーの友人達とディナーを食べ、レースとは関係ない話で盛り上がって少し気がまぎれた。気を使ってもらったかな? ありがたい事だ。
  
レース当日、午前3時前に起床。3時半にはホテルを出て、フィニッシュ地点の駐車場に向かいシャトルバスを待つ。スタート近くに宿をとれば少しゆっくり眠れるのだが、レース後にシャトルバスを待つはめになる。バスは午前4時15分に出発。スタート地点に5時頃到着。コース半ばでシューズとかを変えれるように、ドロップバッグを預ける。前半はほとんど舗装路、後半はほとんどトレイルと聞いたので、トレイルシューズを預けて、ロードシューズでスタートすることにした。少し肌寒かったので、VIPと書かれたテントの中でスタートを待つ。速いランナー達はWave 1で午前6時にスタート。自分はWave 2で6時15分にスタート。たった15分の差だが、かなり明るくなっていて、懐中電灯はほとんど必要ないくらいだった。

  
Folsom Lakeの周りを7マイルほど走り、American River沿いにバイクトレイルを南下(西?)する。この辺りはほぼ舗装路。トレイルに慣れている人はひたすら未舗装部を探して走っていたが、ロードレース用に練習して来た自分は舗装路を気にせず走った。日本人女性ランナーのSさんとひたすらしゃべりながら走った。彼女の人生についてかなり詳しく知る事ができたかもw おかげで本当にあっと言う間に17マイルが過ぎて行った。ここまではマイル10:00 - 12:00くらいのペースで走った。


  
20マイルを過ぎた辺りから少し足に疲れを感じ始めた。ちょっと歩いたりして様子を見たが、足の付け根のあたりや、左足首には痛みも感じ始めた。約半分のポイント、Beal's Pointに着く頃には、このまま走り続けられるかどうか心配になるほど疲れを感じていた。おいおい、これからマラソンの距離走るんだぞ。。。しかし意識はしっかりしていた。ここでドロップしておいたトレイルシューズに履き替え、バックパックを置いてハイドレーションベルトとハンドボトルに変更。GPSのチャージャーも持参。計ったかのようにGPSのLow Batteryサインが出た。チャージャーをハンドボトルのポケットに入れて、チャージしながら走った。だって、GPSのデータが途切れるのはいやだから。。。変なところばかりにこだわるやつ。
  
Granite Bayのエイドステーション(30マイル)に着いた時はかなりの危険信号。これまで食べていたGU、ポテトに加えてここにあったチキンスープを頂く。

Saltstickも定期的に飲んで、あまり飲みたくはなかったがAdvil(痛み止め)も一錠。このあと友達の友達、かなり美人ランナーのCさんが後ろに着いて来たので、ゆっくりとしたペースで、フォームを保ち足首を痛めないよう気をつけて走った。美人が後ろにいたからか、それともチキンスープのマジックか。よく分からないがこの辺りから足の疲れを感じなくなった。50km走った後に疲れがとれるというのは考えられないから、おそらく疲れや痛みを感じなくするなんらかの成分を体が分泌し始めたのだろう。肉体的にはかなり末期的な状況だったのか? シングルトラックになって急にペースが落ちる。抜きたいが前に10人ほどいるので簡単には抜けない。チャンスがあるごとにダッシュしてひとり、ふたりと抜かして行く。

  
フラットなコース、と言われるがロードを走るのとは訳が違う。かなりテクニカルなシングルトラックが長く続いた。かなりのランナーはすでに絶望的な顔をして歩いている。40マイルを過ぎても自分は驚くほど意識がはっきりしていて、足も問題無く動いていた。もちろんスピードは出ないが、着実に距離を伸ばして行った。

  
異変を感じ始めたのは45マイル辺りだろうか。とにかく寝不足の様な感じで頭がボーッとしてきた。気をつけていないと脳みその活動が止まってしまいそうだった。しかもトレイルの右側は崖。落ちたらおしまいだ。すでに何度もつまずいて転びそうになっていたので、とにかくつま先を引っ掛けないよう、気持ち足を高く持ち上げて走る努力をした。エイドステーションではあまり食事も喉を通らず、目を覚ますためにコーラをガブ飲み。オレンジは大量に食べれた。そしてハンドボトルには氷だけを入れてもらい、氷水を顔や頭にかけながら、意識が遠ざかるのを防いだ。この写真もどこでどう撮ったかも覚えていないくらい意識朦朧状態だったようだ。

  
このコースの名物は、最後の3マイルの上り坂。何で最後の最後に、と思ってしまうのだがしょうがない。この時点では目標だった11時間は無理だと思い込んでしまい、ゆっくりと歩いて登り始めた。完全にボケていた。スタートしたのを午前6時だと思い込んでしまった様だ。あと2マイルくらいの場所で、やっと6時15分にスタートしたのを思い出し、ここで走れば11時間切れる!と確信した。フィニッシュの後に他の人のペーサーをやってる人に聞いて分かったのだが、彼は一生懸命私の事も激励していたらしい。意識朦朧の自分は、それに全く反応せず、彼はかなり心配していたとの事。最後はよだれを垂らし、「あ〜、あ〜」と見苦しく喘ぎながら必死で走った。
  
ゴールが目に入り、観客の歓声に応えながら走っていたら感極まって涙ぐんでしまった。もうこれで終わりだ、走らなくて良い、という気持ちと、50マイルを完走した事実に感動しまくっている自分が混在して最後は両手を上げて、叫びながらゴール。
そして、完走者だけがもらえる、念願のパタゴニアのジャケットを手に入れた。どんなに偉い人も、有名人も、金持ちも関係ない。このジャケットを手に入れるには50マイル完走するしか無い。正直、好きな色ではないのだが、ランニングのイベントにはさりげなく見せびらかし着ていこう。嬉しい。本当に嬉しい完走だった。もう2度と走りたくない!と思っていたが、また走ってしまうんだろうなぁ。ウルトラランニングってほとんど、いや確実に病気www

  
正式記録は出ていないが、10:52:09で完走した様だ。
http://app.strava.com/activities/127583365